2013/03/24

これがないと始まらない!海外公演の必需品、テクニカルライダーの書き方。

ここ最近このブログに公募情報をよくアップしていますが、みなさん、もし海外公演が決まった場合、なにはなくとも真っ先に招聘元から要求されるものって何かご存知ですか?
それが、それこそが…「テクニカルライダー」です。
(一人芝居とか、シンプルな作品であれば必要ない場合もありますが)

さて、そのテクニカルライダーって具体的にどういったものかご存知でしょうか?
劇場のスペック、ツアーメンバー、必要機材等、その作品の上演に必要な情報ががまとめられた「作品の取扱説明書」みたいなものです。
F/Tに勤務していた時代は、いろいろな海外カンパニーのテクニカルライダーを見ましたし、自分自身で作った経験もあります。
海外公演での仕込み初日に、現地のテクニカルスタッフの方々が自分が作ったライダーにいろいろ書き込んでいるのを見ると、謎の喜びと感動があるものです・・・。

それはさておき、今まで海外で公演をしたことがない、もしくは、したことはあっても特にライダーとか作ってこなかったという団体の制作さんに向けて、テクニカルライダーの中身についてちょいと解説したいなと思います。
下記の条項についてまとめていけば、海外公演に充分使えるライダーができると思います。
0から1を作るのは大変だけど、2回目以降は大部分コピペでいけるので頑張ってください!

★テクニカルライダーの中身★

作品のタイトル
(英語/日本語)
もともとが日本語タイトルで、海外公演のために英語タイトルをつける場合もあると思います。
その場合、日本語タイトルの表記を忘れてしまいそうですが、日本語で公演評など初演の情報を誰かが検索した時のために日本語タイトルも付けておいた方がいいと思います。

日付
ライダーも何度かアップデートするので、いつ作成したものか明示しましょう。

連絡窓口
この作品に興味を持った場合誰に連絡すればいいのか、担当者の名前、連絡先を書きましょう。

スタッフ名簿(クレジット)
このライダーを元に情報宣伝を行ったりもするので(カンパニーチェックなしでチラシやパンフレットができてたりするのも海外では良くある話。)、スタッフの名前、製作、共同製作などは正確に書きましょう。もし変更の可能性が高いのであれば、絶対に変わらない人の名前だけ入れて、後は魔法の合言葉「ほか」と入れておきましょう。

飛行機、宿泊について
なに空港発の航空券が、何枚必要か。エコノミークラスならわざわざ書かなくてもいいのですが、万が一、万が一、ビジネスではなければならないVIPがいる場合にはそれぞれ記載します。
宿泊は、2人一部屋でもいいのか、全員シングルなのか、その辺ちゃんと書かないと当然3人部屋になりますよ。

作品の基本情報
・上演時間(休憩あり、なし)
・開場時間は開演の何分前か
・出演者数
・スタッフ数と内訳(舞台監督、照明、音響、制作など)
日本からのツアーメンバーの人数と、現地で手配してもらうスタッフ数と内訳を書きます。
現地手配のスタッフには通訳も必要であれば忘れずに!

基本のタイムテーブル
会場によってタイムテーブルが変わってくるのは当然ですが、基本的に仕込は何日必要か、舞台上でのリハーサルはどのくらい必要なのかを先方とイメージ共有するためのものです。

舞台構造、必要な大道具・小道具・消えもの
作品の上演に必要な舞台の大きさ、高さ、スペック。
美術・大道具・小道具・消えものはカンパニーが持ってくるもの、現地で揃えてもらうものを全て記入します。
当然ですが、ここに書かれていなければ、いくら重要なものだろうが現地で用意されていることは200%ありません。(釘とか養生テープとかはさすが書いてなくても用意はあると思いますが…)
また、たとえば椅子が5脚必要な場合に「5 chairs」とだけ書いた場合、どんな椅子が用意されていても文句は言えません。背もたれや肘掛けの有無、素材などこだわりがあるのであればちゃんと書きましょう。ここの項目はとにかく画像を貼りつけまくるのがいいです。
画像貼って、大きさのイメージを書けば、それほどかけ離れたものにはならないでしょう。

照明(カンパニーが持ってくる機材、現地手配の機材)
音響(カンパニーが持ってくる機材、現地手配の機材)
↑これはそのままです。カンパニーの持ち込み機材は、現地と電圧が違うこと多いので変圧器が必要というのを忘れずに!

ここからは体験談になりますが、今までみた一番薄いライダーはA4で1枚。多いものに関しては文庫本くらいあるのも見ました(幸いその作品の担当ではなかったのですがw)
また、当然内容もカンパニーごとにさまざまなアレンジがあります。必要であれば下記も追加するのがいいと思います。
ちなみに、下の2つくらいに細かくなってくるとライダーを読んだ先方の制作さんが「うわぁ…(ちょっと引く)」ってなると思いますけどね。(自分がなったのでw)

<アレンジ項目>
・上演料、滞在中の日当(応交渉ではない場合、ここに書いちゃうカンパニーも結構いました。)
・衣装の洗濯・アイロンがけ(自分たちでするのか、それとも現地スタッフにやってもらうのか。)
・楽屋割および楽屋の備品(鏡、ドライヤー、ハンガーラックなど)
・劇場のシャワーを使用する場合、石鹸やシャンプーを用意してもらうのか、持ち込むのか。
・ケータリングの内容(水、コーヒー、ジュース、お菓子の種類、とか。)

他に、これも書いていてよかった(書いておけばよかった)っていう体験談などあればぜひ教えてください★

(2013.6.27 追記)
そういえば、過去に担当したジェローム・ベルは、公式サイトに全作品のテクニカルライダーを掲載しています。
全世界からひっぱりだこで「ライダー送ってくれ」の依頼にいちいち対応するのが面倒くさいのかな…?必要最低限のものだと思いますが、でも初めてライダーを書くという方はまずはこれを参考にするのがいいですね!
ジェローム・ベルのサイト
( “performances”をクリック→作品タイトルをクリック→“technical rider”)