2013/03/16

税務・法務・著作権…制作者を強力サポート。韓国KAMSが実施するオンライン・コンサルティング

先週アップしたKAMSの公演芸術海外進出戦略地図〈Map & Case〉に関するブログ記事が思いのほか反響があったので、KAMSが行っている事業のうち「日本にあったらいいなぁ」というものをもうひとつご紹介。

ちなみにしつこく補足すると、
*KAMS…Korea Arts Management Service。韓国語では「예술경영지원센터(芸術経営支援センター)」。韓国語の名前のほうがやっぱりピンとくる感じがあるのですが、韓国文化体育観光部傘下の舞台芸術を中心とした芸術経営支援センターで、アートマネージメントに関わる組織・個人のための研究·調査、コンサルティング、アカデミー、知識や情報の提供を通じて、芸術の産業機能を強化することを目的とした組織です。

さて、今回紹介するのはKAMSがウェブサイト上で行っている「オンライン・コンサルティング」です。
日本でも韓国でも、舞台制作者が業務の中で抱える疑問や問題は色々あると思います。そのなかで、制作者同士、あるいは劇場などに相談すれば解決できるものもあれば、法務や税務に関することで専門家に相談しなくては解決できない問題もあると思います。


相談できる弁護士や税理士が身近にいれば話は別ですが、大きな劇場やフェスティバルでもなければ、そういった方々が身近にいることもほとんどないと思うので、制作者としては頭を抱えるところですよね…。
また誰かがそういった問題に対して過去に専門家に回答を仰いだことがあったとしても、一組織の間でのみの問題解決にとどまり、そのナレッジは広く共有されることもありませんよね。
(そもそもそういった専門家に相談するのでさえお金がかかったりするので、お金をかけて解決した問題を広く共有するという発想すらなかなか持ちづらいことなのかもしれません。)

KAMSが行っているコンサルティングは、オンライン、オフラインの窓口を通して各分野の専任コンサルタント、専門家知識を持つボランティア(Pro bono)などが連携し、文化芸術団体がより合理的で専門的な運営をできるように必要なソリューションを提供することを目的としています。

ちなみに、オンライン・コンサルティングのほかにも、あと2つのコンサルティングのプログラムがあり、ひとつは「会いに行くコンサルティング」(直接1:1で会って相談するタイプ。開催期間は決まっており、PAMS(ソウル芸術見本市)などでもブースが開かれる。)で、もうひとつは「機関連携型コンサルティング」(法律、会計、寄付など専門分野に関して、1回のみの相談ではなく中長期的なコンサルティングを行う。各分野の専門機関と連携して運営され、専門知識を持った人たちのボランティア活動(Pro bono)として行われる。)があります。

コンサルティングの分野は全部で11あり、
(1)団体・法人設立および運営 (2)会計・税務(3)人事・労務(4)契約(5)著作権(6)国際交流(7)文化芸術政策・制度(8)寄付金(9)専門芸術法人・団体指定制度(10)社会的企業(11)広報・マーケティング、に分けられています。

オンライン・コンサルティングは常設で、ウェブサイト、Eメール、電話、SMS等で相談ができ、文化芸術活動に携わる団体・機関の担当者であればだれでも利用することが可能です。

ちなみに現在寄せられている質問を見てみると(鍵がかかっているので内容は投稿者とKAMS、コンサルタントしか読めないようになっています。タイトルのみ閲覧可能)たとえば

  • 国際共同製作における国際租税関連
  • 労務サービス業者の一方的な解約による違約金に関する法律
  • 後援会の設立要件、手続き
  • 退職金と未払い賃金
  • 任意団体の設立について
  • 源泉徴収の問い合わせ
  • ミュージカル・ガラコンサートの著作権

などが寄せられています。週に5件程度のコンサルティング依頼があるようで、現在延べ1236件投稿されています。(これはウェブサイト上での申請件数のみ)

で、よくある質問に関してはFAQとしてこちらにまとめられています(全部で80件)

  • 著作権の保護期間
  • 不正受給の具体事例は何ですか
  • 公演契約書の内容はどのようなものが含まれますか、既定の書式はありますか
  • 非営利団体も事業者登録をする必要がありますか
  • 生存している人物の人生を作品化するときは、どのような点に気をつけなければいけませんか
  • 海外公演時の上演料の受け取り方
  • 天変地異による公演中止時の損害賠償
  • 口頭での契約の契約破棄による損害賠償

タイトルを見れば分かる通り、日本も韓国も担当レベルでは聞きたいことは同じですよね!(でも当たり前ですが国内のことに関しては法律が違うから、答えもちょっと違う…)
日本でもどこかにこういう知識をアーカイブしていくことが必要だと思います。
キーワードは「合理的に」ですよ!
KAMSのサイトを見ていると、ことあるごとに合理的という言葉が出てくるので、うけうりです。

《参考リンク》
まてぃっこブログ 「KAMS作成:公演芸術海外進出戦略地図〈Map & Case〉」(2013/03/05)
まてぃっこブログ 「KAMS: 2013年センターステージ・コリア公募」(2012/09/26)