2016/04/10

フリーランスの制作者のギャラはどうやって決めるのか

春ですね…。春といえば異動の季節。
特にこの業界は人材の移動が激しいので、組織から組織へ、組織にいた人がフリーランスへ、フリーランスだった人が組織へと今年も大移動しましたね。
その中でも、東と西、それぞれにダイソン並みに人材の吸引力の強いいくつかの組織があったのがこの春の印象的な出来事でした。

今年からフリーランスになった方は、ぜひ私の以前のエントリー「フリーランスの制作者であるということ、いろいろ。」を読んでいただけると、耳かき一杯分くらいは参考にしていただけるかもしれません…。

それはさておき、Next制作塾EXなど、制作者の知識やスキルを高めるための講座に講師として呼ばれた際に、「せっかくなんで、聞きたいことがあれば遠慮なく聞いてください」とよく言っているのですが、やっぱりみなさん気になるのが制作者としてのギャラをいくらで予算書に計上すればいいのか、あるいは、フリーランスの場合、いくらで先方と交渉すればいいのか、のようです。

これって難しいですよね。
すっごくよくわかります!


私も組織を離れて初めてフリーランスになったときにぶつかったのが、この「自分のギャラをどうやって決めたらいいか問題」でした。

それまで組織で働いていた時には、実際にいろんな予算書を見てきたので、あるプロジェクトに対して制作費がいくら支払われているかは知っていたのですが、その組織に払われた制作費のうちいったいいくらが個人に支払われているのかなんてところまでは分からないですし、またフリーランスの場合、業界の「相場」はいくらくらいで、自分のキャリアだったらその相場に対してどのくらいで交渉可能なのか(高めか、低めか)…そんなことは全く分からなかったし、そもそも聞ける人が周囲にいませんでした。
センシティブなことなので、聞いていいかどうかもわからなかったですしね。

なので、フリーランス1年目は、今考えればめちゃくちゃ安いギャラで仕事を受けてました。
その時の私の感覚は「自分に仕事を振ってくれるだけありがてぇ~」という感じで、天の恵みを受け取るかのように「いくらであっても仕事をいただけるだけありがてぇっす☆(ゝω・)v」と無尽蔵に仕事を引き受けていたのです。
その時は仕事を選ぶなんてもってのほか、っていう意識でしたし…。

そしてフリーランスの最初の2年間、激減した年収。
特に1年目は、前年度の年収に応じて容赦なく降りかかってくる「住民税」支払いの請求書!
住民税だけではない、国民健康保険税、国民年金税の請求の嵐!!
ジェットコースターのように下がっていく預金残高…。

この恐怖感は、フリーランス、あるいは起業した人としか分かち合えないと思います。

命からがらなんとかフリーランスを2年やって「これではいかん!持続可能じゃない!!」と気づいて、まず自分のなかでフリーランスとしての意識と地位向上することから始めました。
(ここで組織に戻るという選択肢を取る方もいると思います。)

フリーランスで働いている他の人がいくら受け取っているかなんて知らない。
だけど組織にいた際の自分の月収は当然知っている。まずは組織にいた時の自分を超えること。

組織にいたときに比べて、今は経費や交通費、社会保険も自分で払わないといけないのだから、組織にいた時よりもらわないとまずい、むしろもらって当たり前。

「フリーランスの制作者であるということ、いろいろ。」にも書いたように、舞台芸術のフリーランスの制作者って、組織でカバーできないところにピンチヒッターのように入ってその企画やプロジェクトを成立させるのだから、その瞬発力と機動力の分だけ報酬はもらって当然、という意識に変えました。

で、ギャラをいくらにするか。
たとえばギャラの設定って1万円単位とかにしちゃうと、無限の可能性があるわけです。
仕事の依頼があった際に、あらかじめギャラが指定されているものもあって、それは交渉するにしても目安があるのでまだ楽なのですが、先方からギャラを聞かれるときもあります。その時に1万円単位で考えると、じゃあ8万円の仕事と、9万円の仕事と、10万円の仕事の違いは何か、と考え始めると、根拠に困りますよね。

たとえば当日運営のお仕事であれば、1日あたりいくら、と決めてしまって日数分で計算することもできます。でも、いわゆる「プロジェクト・マネジメント」という役割での制作だと、3か月とか6か月前から関わっても毎日どのくらいその仕事に時間を費やしたかは日によって違うので、そういう計算はできないですよね。(やったらすごい金額になる!)

そこで私が考えたのが、単位制にするという方法でした。
最初は1単位=15万円。

これだと、15万円以下の仕事は無い(受けない)ということになります。
15万円の次は、30万円(2単位)です。

さすがに、15万円と30万円だったら、ある仕事を依頼された際にその内容で15万か30万かは自分で判断がつきますよね。

こんな感じで、報酬は15・30・45・60…と15単位でしか刻みがなければ、かかわる日数や、本番の拘束日数、制作に求められるレベル(プロジェクトの難易度)によって、自分の中では比較的簡単にギャラが提示できます。

この話をすると「15万円以下は受けないんですか…?」と聞かれますが、もちろん単発の講座とかシンポジウムとかは例外ですが、「制作」の仕事としては、受けていません。

それは最初のフリーランス2年間でこれ以下の金額でお仕事を受けて、そもそもフリーランスは経費や社会保険が自分持ちなので、これ以下だとまずいということが分かってきたということ。
(これこそが2年間の下積み?のおかげとも言える…)

そして、万が一私がこの金額以下で受けると、自分よりも若手のフリーランスはもっと安い人件費で受けなくてはいけなくなってしまうかもしれず、遠巻きに搾取に加担してしまうということ。あるいは、自分よりキャリアの若い制作に仕事が回らなくなってしまうのではないかということ。

キャリアが浅いうちは報酬が安くても仕方ない部分はあると思いますが、経験積んで、キャリアアップして、どんどん稼げるようなモデルを作らないとこの業界には人が入ってこないこないですよね。
今、動けるうちにフリーランスとして稼げる上限値をどんどん上げていくべきだという意識を持っています。

ちなみにフリーランス3年目で1単位=15万円からはじめ、4年目で20万円に値上げしました。今年は5年目でございます。

こんなお金の話、なかなかしにくいんですけど、でも考え方のひとつのヒントになればと思い書きました。もちろんフリーランスの数だけ、報酬の考え方も、ひとそれぞれにあるとおもいます。

私も、みんなどうしてるんだろ~?って結構興味あるんですけど、実際どうなんですかね!?