2013/03/02

キム・ファン『皆のためのピザ』に続く新作を今春発表!

昨年12月に横浜の十六夜吉田町スタジオで上演されたキム・ファンの『皆のためのピザ』

第二次世界大戦、そしてその後の朝鮮戦争を経て、大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)という2つの独立国家に分裂し、現在も民間人は一切の交流が禁止されているこの2つの国。
韓国人アーティスト、キム・ファンは、外部の情報が遮断されている(はず)の北朝鮮の人々が知りえない外国文化(ピザの作り方、海外旅行の荷造り、K-pop、クリスマスの遊び方の4つ)について、
短編映像を製作し、裏のルートを通じて北朝鮮の人々にそのDVDを配布した。

『皆のためのピザ』は、DVDに収められた短編映像の上演と、その映像を見た北朝鮮の人々からとどいた手紙の朗読という構成で上演された。
一切の接触が禁止されているはずの南北間の隙間をぬって、北朝鮮に対して我々が抱きがちな「みな貧しく、テレビやDVDプレーヤーがある家はほとんど無いんじゃないか」、「外国の情報は一切遮断されているから、外のことを何も知らないんだろう」というステレオタイプを一新する、新鮮な驚きにみちた作品であった。

さて、2010年に製作されたこの『皆のためのピザ』から3年。
2013年3月、キム・ファンはSara Manente、Marcos Simoes とともに『皆のためのピザ』の試みをさらに一歩進める新作『x: I liked B better. y: I am 29 too. 』をFestival Bo:mにて発表する。

Photo: (C) the artist

(以下、Festival Bo:mの作品ページより引用)
韓国と北朝鮮のとある場所に密かに設置される2台の高性能カメラ、マイク、スクリーン。
これらを介し、xとyは初めてお互いに会い疎通を試みる。
装置は、コミュニケーションのチャネルとして作用すると同時に、故意的、逆説的にxとyの完全な出会いを妨害する。しかし観客たちは実用的で透明なシステムを使い、二人の俳優の間に起こる偶発的な事件を濾過なしに目撃する。xとyは初めての出会いの瞬間、テレパシーを利用して周囲の物と遊び、動きを作り出して会話をする。
送信者と受信者を交替に仮定し、彼らは特定の情報を私たちが知っているいかなる感覚的な疎通方法や身体的接触なしにお互いに伝送する。
この作品は、デザインオブジェクト、科学的経験、実用的なジョーク、そして大胆なリアルタイム即興劇だ。
(ここまで)

前回の『皆のためのピザ』のように、キム・ファンならではのユーモア精神にあふれつつも
分断された2つの国同士のコミュニケーションにさらに深く突っ込んだ
(言い換えれば、前作よりもさらに用いる手段・方法としては危険な)作品ではないかと思う。

《上演情報》
日時:2013年3月30日(土)5pm、31日(日)5pm
場所:ソガン大学メリーホール小劇場
公演時間:60分

演出:Hwang Kim、Sara Manente、Marcos Simoes
製作:Festival Bo:m
制作:Joo Young Koh
出演:未定
後援:韓国文化芸術委員会 、在韓ポルトガル大使館

《参考リンク》
まてぃっこブログ「Festival Bo:mについて」(2012/04/26)
CINRA.NET 「ピザから浮き彫りにする北朝鮮と韓国、映像&朗読による公演『皆のためのピザ』」(2012/12/05)